人前では明るく笑えるのに、心はつらい…微笑みうつ病とは?
「職場や家族の前では元気に振る舞えているのに、ひとりになると涙が出そうになる」そんな状態に心当たりはありませんか。それはもしかすると、微笑みうつ病かもしれません。
「微笑みうつ病」という言葉は正式な医学用語ではありませんが、一般的には「仮面うつ病」や「非定型うつ病」に近い状態を指すものとして知られています。(以下、微笑みうつ病と記します。)この微笑みうつ病とは、表面上は明るく笑顔でいるように見えながらも、内側では深刻な苦しみや抑うつ感に苛まれている状態を指します。たとえば、職場や学校では普段通りに活動し、社交の場でも活発に振る舞える一方、ひとりの時間には自己否定感や虚無感が押し寄せる、といった特徴があります。特に、自分の悩みを周囲に打ち明けたり、助けを求めたりすることが難しいと感じる人が、この状態に陥りやすいと言われています。
微笑みうつ病の主な症状
微笑みうつ病の症状は、表面的には見えにくいため、自分でも気づきにくいのが特徴です。以下のような兆候がある場合は、注意が必要です。
- 気分の落ち込みや無気力感が続く
- 楽しめていた趣味や活動に興味を持てなくなる
- 疲れが取れない、エネルギーが湧かない
- 自己評価が低くなり、「自分には価値がない」と感じる
- 不眠または過眠が続く
- 食欲の減退または過食
- 感情を表に出さず抑え込む傾向がある
- 家族や友人との距離を感じる、孤独を感じる
微笑みうつ病の原因とは?
微笑みうつ病の背景には、慢性的なストレスや心理的負担に対する我慢の積み重ねがあります。家庭や職場での責任感の強さ、人間関係の緊張、過度な自己犠牲などが引き金となり、内面ではストレスを抱えながらも、外には「大丈夫な自分」を保とうとする傾向があります。
また、「弱音を吐いてはいけない」「迷惑をかけてはいけない」といった思い込みが、感情を抑え込む要因になることもあります。このような内面と外面のギャップが続くことで、心の疲労が蓄積し、やがて抑うつ症状が現れることがあります。
微笑みうつ病が悪化しやすい?
微笑みうつ病(非定型うつ病など)は、表面的には元気に見えても、内面ではストレスや抑うつを抱えた状態を指すことがあります。正式な診断基準はありませんが、既に軽度のうつ症状が存在しているケースもあり、放置すると悪化する可能性がある点に注意が必要です。また、自分では症状に気づかず、普段通りの生活を無理に続けてしまうこともあります。こうした無理の積み重ねは、症状の急激な悪化を引き起こすリスクを高めることがあります。少しでも「おかしいな」と感じたら、早めの相談や受診を検討することが大切です。
微笑みうつ病と一般的なうつ病との違い
微笑みうつ病
微笑みうつ病(非定型うつ病など)は、表面的には元気に見えても、内面ではストレスや抑うつを抱えた状態を指すことがあります。正式な診断基準はありませんが、既に軽度のうつ症状が存在しているケースもあり、放置すると悪化する可能性がある点に注意が必要です。
すでに軽度のうつ症状が出ているにもかかわらず、自分自身がその事実に気づかず、普段通りの生活を無理に続けてしまう場合もあるでしょう。このような無理が積み重なると、症状が急激に悪化するリスクを高める可能性があります。
一般的なうつ病
一般的なうつ病は、抑うつ感や無気力さが日常生活に明確に表れるため、周囲の人がその異変に気づきやすい傾向があります。一方、微笑みうつ病では、外見や言動に問題が見られないため、周囲の目からその苦しみが見過ごされてしまうことが多いのが特徴です。
このため、適切な支援を得るタイミングが遅れてしまうことが少なくありません。結果として、本人の心身にかかる負担が限界を超えた時に、急激に症状が悪化する危険性があります。そのため、本人のセルフケアだけでなく、周囲の人々が微細な変化に気づき、理解を深めることが重要です。早期に発見し、適切なケアを受けることが、最良の対応策となります。
微笑みうつ病の診断テスト
以下のセルフチェックは、ご自身の状態に気づくための参考としてご利用ください。
なお、セルフチェックだけで診断が確定するものではありません。気になる症状がある場合は、早めに専門の医師にご相談ください。
1:朝、職場へ到着するまでが辛い
目が覚めると、1日が始まることに沈んだ気持ちになります。「今日はあれをしないといけない」「あの人に会う予定があるから行かなきゃ」と、頭の中がスケジュールで一杯になります。ベッドから出ることが辛くて、いつもより寝られる休日が待ち遠しく感じられます。何とか身支度を整え、体が重たく引きずるようにして外へ出ます。通勤中も否定的なことを考えています。しかし、職場に到着すれば、普段通りに仕事ができます。
仕事が終わった後の帰り道は、解放されたように感じて気分も上がります。家に戻ると強い疲労を感じますが、何かが足りないと感じ、目的もなくスマートフォンをいじったりゲームをしたり、動画を見たりします。すぐに眠りたいと思わなくなり、お酒を飲む習慣がある方は以前よりもお酒の量が増えます。
2 :仕事で些細なミスが増えた
うつ病は脳機能が低下する疾患です。集中力が低下するため、些細なミスや物忘れが増えることもあります。仕事は普段通りにこなしていますが、以前よりもミスが増え、予定のある日を間違えるといった物忘れが増えていきます。
3 :趣味や娯楽を楽しめなくなった
かつて大好きだった趣味も、以前ほど充実感を得られなくなります。楽しむことができても、外出や準備が煩わしく感じられるようになります。人との交流も気が重くなり、誘いを断ってしまい、休日を自宅でゆっくり過ごす回数が増えていきます。
4 :部屋が乱雑になる
整理整頓が面倒になり、掃除を後回しすることがあります。ゴミだらけというわけではありませんが、必要のない物が散らかって放置されます。部屋が乱雑な状態を見る度に、「片付けなければならないな」と考えても、なかなか行動に移せません。
5 :常に虚しさを感じる
漠然とした不安や後悔に囚われ、人生のリセットを望む気持ちが押し寄せてきます。過去を思い返し「あの時に戻りたいな」「あの時はこうしていれば」と反省の念に駆られます。将来に希望を見出すことが難しくなります。
6 :怒りっぽくなる
前よりも感情をコントロールするのが難しくなります。イライラすることが増え、些細なことでも怒りっぽくなります。お店で気に入らないことがあると、すぐに不満を口に出すこともあります。それでも、怒りが和らいだ後には、「なぜあんな些細なことで怒ったのだろう」と後悔します。
微笑みうつ病は、責任感が強く、我慢強い方がかかりやすいと言われています。しかし、ネガティブに捉えると、問題を1人で抱え込み、他人に相談することが苦手な方とも言えるでしょう。ご自分の心の不調を病気と受け入れられず、「怠け者」「疲れているだけ」だと勘違いしてしまい、長く耐え忍んでしまうのです。
微笑みうつ病の治療
微笑みうつ病は典型的なうつ病と同じように、休養・環境調整・薬物療法・精神療法が行われます。
休養と環境調整
まずは⼼⾝ともに十分に休ませ、ある程度症状が和らいできたタイミングで、ご本人にとって取り入れやすい家事・軽作業から始め、無理なくそれができる環境を作ります。
薬物療法
必要に応じて、抗うつ薬や睡眠導入剤、抗不安薬を使って脳内のバランスを整えます。副作用や効果については主治医からの説明をよく聞きながら、服薬を続けましょう。
精神療法(認知行動療法など)
休養と薬物療法によって症状が落ち着くこともありますが、うつ症状を引き起こした要因(生活環境、職場や家庭のストレス、考え方の癖など)へのアプローチが重要です。環境調整によって改善できる部分もありますが、部署や配置の変更、転職、転勤など、大きな環境の変化が起きた場合には、うつ病の再発リスクが高くなります。それを防ぐためには、ストレスへの対処法を身に付け、ご自身の性格傾向を知る精神療法が不可欠です。精神療法では主に認知⾏動療法が行われます。この療法は、主治医の指示を受けた心理師が担当します。
「明るくふるまえる自分」でも心は疲れているかもしれません
微笑みうつ病は、周囲から見えにくいため、本人さえも「自分はうつ病ではない」と思い込んでしまうケースがあります。「笑っているから大丈夫」とは限りません。誰にも相談できずにつらさを抱え込んでいる方は、少しでも不調を感じたら、お早めにご相談ください。
心の健康は、あなた自身と、あなたの周りの人を守るためにも大切なものです。