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境界性パーソナリティー障害

境界性パーソナリティー障害(BPD)の特徴と口癖|接し方・原因・治療まで解説|堺そらはねメンタルクリニック

「不安定な気持ちが続く」「人との関係に悩みやすい」——もしかすると、それは境界性パーソナリティー障害(BPD)によるものかもしれません。BPDの方は、感情や人間関係の揺れに伴って、特有の言葉や表現を使うことがあります。本ページでは、境界性パーソナリティー障害の特徴や口癖、原因、診断方法、治療法、そして接し方のヒントまで、わかりやすくご紹介します。

境界性パーソナリティー障害(BPD)とは

人間は成長の過程で、「十人十色」と形容される様々な個性を身につけながら、発達を遂げています。前向きで陽気、几帳面な一方で怒りっぽい、神経質やおおらか、飽きっぽいなど、性格を表す言葉は数え切れません。誰しもが異なる性格を持っている中で、極端に傾いた部分があり、自分だけでなく他人も苦しめるような状況に陥る方もいます。

こうした方々を精神医学の分野では「パーソナリティ・ディスオーダー」と呼び、日本では「人格障害」として知られるようになりました。特に、気持ちの波が激しく、感情が極端に不安定で、善悪を極端に判断したり、強いイライラ感情が抑えがたくなったりする方は「境界性人格障害」とされています。現代では「境界性パーソナリティ障害」とも呼ばれています。

「境界性」という概念は、もともと「神経症」と「精神病」の境界領域の症状を示すとされてきた歴史的背景があります。現在では、それらの中間という理解よりも、感情規制や対人関係の不安定性が特徴となるパーソナリティ障害として捉えられています。

境界性パーソナリティ障害(BPD)は何人に1人?

境界性パーソナリティ障害は、一般人口の約1.6%にみられるとされ、一部の研究では最大で5.9%に達する可能性も報告されています(MSDマニュアル, 2023)。診断される方の約75%が女性であり、特に思春期から若年成人にかけて多く見られる傾向があります。

・出典
MSDマニュアル プロフェッショナル版(日本語)
「ボーダーラインパーソナリティ障害(境界性パーソナリティ障害)」

境界性パーソナリティー障害(BPD)の主な特徴

よく見られる症状として、主に以下の点が挙げられます。

  • 現実または妄想で、人に見捨てられることを非常に恐れ、不安を感じている。
  • 対人関係が不安定で、コミュニケーションがうまくいかない。
  • 気分や感情が頻繁に変わり、周囲の人々が対応しきれないことがある。
  • 感情のコントロールが難しく、些細なことでイライラしたり激しい怒りを感じたりするなど、傷つきやすい。
  • 自殺をほのめかす行動や自傷行為を繰り返し、周囲に心配をかけることがある。
  • 自己破壊的な行動(薬物、アルコール、性行為、万引き、過食、買い物など)に依存しやすくなる。
  • いつも虚無感を抱き、幸福を感じにくい。
  • 生きることに対する苦しさや違和感を感じ、自分が何者なのか分からないと感じることがある。
  • 強いストレスを受けた際、一時的に記憶を失い、精神疾患に似た症状を引き起こしやすい場合がある。

境界性パーソナリティー障害(BPD)の方の口癖とは?

境界性パーソナリティ障害(BPD)の方は、その時々の感情や状況によって、さまざまな話し方をする傾向があります。自己批判的な言葉を口にしたり、怒りをあらわにする、攻撃的な表現になるといったこともあれば、感情や行動が不安定だったり、他者への強い依存を言葉にする場面も見られます。

日常生活における口癖

境界性パーソナリティ障害(BPD)を抱える方々が、日常生活で頻繁に口にする言葉は、自己認識や人間関係に対する深い不安を示すものです。こうした言葉には、自己不信や見捨てられる不安、また、対人関係における混乱が含まれており、彼らの感情的な揺らぎや葛藤など、深い内面が投影されていることがあります。

よく見られる口癖の例

  • 「どうせ私(僕)なんて誰にも必要とされていない」
  • 「私(僕)のこと、見捨てるつもりでしょ?」
  • 「信じたいのに、信じられない」
  • 「本当に私(僕)のこと好きなの?」
  • 「こんな私(僕)なんて、もういなくなった方がいい」

これらの言葉には、他人とのつながりを求める気持ちと、裏切られることへの恐れが同居しています。他者との親密な繋がりを築こうとしつつも、過去に経験したことや不安定なセルフイメージから、拒絶されるのではないかという不安が常につきまといます。このような相反する感情の葛藤から、こうした言葉が表れるとされています。

境界性パーソナリティ障害(BPD)の症状

境界性パーソナリティ障害の症状には、6つの特徴があります。

  • 感情を適切にコントロールできない
  • 孤独感や不安に襲われる
  • 極端な考え方をすることがある
  • 空虚感を抱きやすく、幸福を感じにくい
  • 思わぬ行動に走りやすい
  • 自殺や自傷行為の繰り返し行動に至る可能性がある

境界性パーソナリティー障害の原因と発症要因

境界性パーソナリティ障害(BPD)の発症には、生まれ持った気質や性格傾向、そして育った環境など複数の要因が複雑に関係していると考えられています。以下では、その主な原因やリスク要因について詳しく解説します。

先天的な要因(遺伝や脳の特性)

境界性パーソナリティ障害は、脳の感情調整機能の脆弱性や、不安を抱きやすい気質が関与しているとされています。また、遺伝的な影響も一因とされ、家族に同様の特性を持つ人がいる場合、発症リスクが高まると考えられています。

幼少期の愛着形成と家庭環境

幼い頃の母親との安定した愛着関係が築けなかった場合、感情の調整や自己肯定感の形成に大きな影響を及ぼすことがあります。特に、「共依存状態(親子が過剰に依存し合う関係)」や「過度な否定・厳しすぎるしつけ」によって、子どもが“真面目な優等生”として自分を押し殺すようになると、将来的に自己否定感が強くなり、境界性パーソナリティ障害を発症するリスクが高まります。

環境的ストレスやトラウマ体験

以下のような心理的ストレスやトラウマも発症の引き金になることがあります。

  • クラスメイトや同僚からのいじめや無視
  • パートナーからの暴言や暴力(DV)
  • 理想と現実のギャップによる失望感・虚無感
  • 大切な人との別れや孤立経験

まとめ

このように、さまざまな要素が複合的に影響し合って発症に至るため、治療や支援においては、その背景を丁寧に理解することが大切です。

境界性パーソナリティー障害(BPD)の診断

境界性パーソナリティ障害の診断は、通常、米国精神医学会が発行する精神障害の診断と統計マニュアル(DSM-5)に基づいて行われます。
境界性パーソナリティ障害の診断を確定させるためには、対象者が不安定な人間関係や自己像、気分を経験し、衝動的な行動の歴史があることが必要です。

DSM-5の診断では、9つの診断基準のうち5つ以上が満たされ、成人期早期までに症状が始まっていることが確認される場合に境界性パーソナリティ障害とされます。ただし、臨床的には長期にわたる行動や対人関係の様子、他の病態との鑑別も重要です。

  • 見捨てられる可能性から逃れるため、必死に努力する。
  • 不安定で激しい人間関係を持ち、相手を理想化したり軽視したりすることに揺れ動く
  • 自己像や自己感覚が頻繁に変わる
  • 自身に実害を及ぼすかもしれない2つ以上の領域で、衝動的に行動しています(安全でない性行為、過食、無謀な運転など)。
  • 自殺を考えたり、自殺をほのめかす行動、自傷行為などを繰り返したりする
  • 気分が急激に変化する(通常は数時間しか持続できず、数日間続くことは滅多にありません)。
  • 慢性的に虚しさを感じる。
  • 不適切で強い怒りや、怒りのコントロールに問題を抱えている。
  • ストレスによって引き起こされる、一時的な妄想的思考や深刻な解離症状(非現実的な感覚や自己との切り離し)が現れている。

また、これらの症状は成人早期に始まる必要があります。

境界性パーソナリティー障害(BPD)の治療

境界性パーソナリティ障害(BPD)の治療は、主に心理療法(カウンセリング)を中心に行われます。
症状に応じて、気分安定薬・抗うつ薬・抗不安薬などの薬物療法を補助的に併用することもあります。

心理療法が治療の中心です

境界性パーソナリティ障害の治療において、特に有効とされているのが以下の2つの療法です。

弁証法的行動療法(DBT)

感情のコントロールが難しい人のために開発された治療法で、感情の波に巻き込まれず冷静に対処するスキルを身につけることを目指します。

メンタライゼーションに基づく治療(MBT)

他者の気持ちや自分の内面を客観的に理解する力(メンタライゼーション)を高め、対人関係のトラブルを減らすことが目的です。

治療のポイント

境界性パーソナリティ障害の治療は、数か月で完了するものではなく、1年以上の長期的な支援が必要になることが一般的です。

  • 治療の過程では、過去のトラウマや避けてきた感情に向き合うこともあります。
  • 症状の変化や回復の進度に合わせて、治療方針を柔軟に見直しながら進めていきます。

医師やカウンセラーとの関係も大切

境界性パーソナリティ障害の特徴として、人間関係の不安定さが挙げられます。そのため、医師やカウンセラーとの関係の中でも、信頼や不安が揺らぐ場面があるかもしれません。
しかし、治療を継続する中で、信頼関係を築きながら回復を目指すことがとても大切です。
途中で迷ったり不安を感じたとしても、「治りたい」「変わりたい」という気持ちを大切にし、焦らずじっくりと向き合っていきましょう。

境界性パーソナリティー障害(BPD)の方との接し方

前述のとおり、境界性パーソナリティ障害(BPD)を抱える方々は、日々、強い不安や恐れと向き合いながら過ごしています。

時に、周囲を困らせてしまうような言動や、人との距離を急に取ってしまう行動が見られることもありますが、そうした振る舞いの背景には、「自分は大切にされているのか」「見捨てられないか」という切実な気持ちが隠れていることがあります。こうした行動は、本人にとっては心の内を表現する一つの方法であり、大切な人の反応を通して、自分の存在価値やつながりを確かめたいという思いからくるものかもしれません。

だからこそ、表面的な行動だけで判断するのではなく、その奥にある気持ちに目を向けてみることが大切です。
とはいえ、支える側もすべてに応えようとせず、自分の無理のない範囲で行動することも重要です。ときには、距離を置く勇気が、双方にとって良い結果をもたらすこともあるでしょう。