TOPへ

うつ病

うつ病でお悩みの方へ|堺市・三国ヶ丘の心療内科|堺そらはねメンタルクリニック

「うつ病は治らない」と感じている方へ。うつ病の種類・症状・原因・診断基準・治療方法まで、専門医がわかりやすく解説します。

うつ病は治らない?と感じる方へ

うつ病は治らない?と感じる方へ
「自分のうつ病は治らないのではないか」と感じ、未来に対して不安を抱える方も多いかと思います。そんなあなたにお伝えしたいのは、うつ病にはさまざまな種類や特徴があり、それぞれに合った治療方法があるということです。
このページでは、うつ病の原因や特徴、そしてそれに合った治療法について詳しくご紹介します。一人ひとりの症状や原因が異なるため、適切な治療を選ぶことが回復への第一歩となります。あなたのペースで進んでいけるよう、前向きな気持ちを持ちながら、最適な治療を受けることが大切です。諦めずに治療を受けることで、少しずつでも症状が改善する可能性は十分にあります。心のサポートを大切にしながら、一緒に回復に向かって歩んでいきましょう。

うつ病の定義

うつ病は、深刻な悲しみや興味や喜びの減少が著しく、社会生活を困難にしてしまう状態です。悲しい出来事の直後に現れることもありますが、その悲しみの度合いが突出しており、継続時間が長いのが特徴です。
私達は人生の中で憂うつ感を感じることがありますが、その強さや持続時間が数週間に及ぶ場合は、うつ病の可能性があります。うつ病は、誰にでも発症する可能性のある、珍しくない疾患です。

気分の落ち込みが見られる主な疾患

気分が落ち込む症状は、さまざまな精神疾患に共通して見られます。ただし、それぞれの疾患は原因や経過、治療方針が異なるため、正確な診断と適切な対応が重要です。ここでは代表的な疾患についてご紹介します。

大うつ病性障害(うつ病)

最も一般的なうつ病の形態で、2週間以上にわたって持続する気分の落ち込みが特徴です。患者さんは日常的な活動への興味や喜びを失い、強い疲労感や無気力感を感じることが多くなります。睡眠障害や食欲の変化も一般的な症状です。多くの場合、集中力の低下や決断力の減退も見られ、時には無価値感や罪悪感に悩まされることもあります。

双極性障害(躁うつ病)

双極性障害は、気分の極端な上下変動を特徴とする疾患です。躁状態とうつ状態が交互に現れ、その症状の程度によってI型とII型に分類されます。
I型では、顕著な躁状態が現れ、異常な高揚感や活動性の増加、誇大的な考えが特徴となります。時には現実検討力が低下し、入院治療が必要になることもあります。一方、II型では比較的軽度の躁状態(軽躁状態)が見られ、社会生活への影響はI型より少ないものの、慎重な経過観察が必要です。

持続性抑うつ障害(気分変調症)

2年以上にわたって継続する慢性的な抑うつ状態を特徴とします。症状は大うつ病ほど重度ではありませんが、長期間持続することで患者さんの生活の質に大きな影響を与えます。気分の落ち込み、意欲の低下、疲労感などが慢性的に続き、日常生活に支障をきたすことが少なくありません。

季節性情動障害(季節性うつ)

季節の変化、特に秋から冬にかけて症状が出現するのが特徴的です。日照時間の減少が脳内の神経伝達物質のバランスに影響を与え、抑うつ症状を引き起こすと考えられています。

産後うつ病

出産後の女性に発症する特殊なタイプのうつ病です。出産後数週間から数ヶ月の間に発症することが多く、ホルモンバランスの急激な変化や育児ストレスが主な要因とされています。強い不安感や焦燥感、育児への自信喪失、極度の疲労感などが特徴的な症状です。

うつ病の症状

初期症状

数日から数週間かけて徐々に症状が現れます。動作が緩慢になって悲しげに見えたり、怒りっぽくなったり、不安そうな様子が見られたりします。以前楽しめていた活動に対して興味を失います。食欲不振から体重が減少することもありますが、過食と体重増加も見られます。

中等度の症状

悲嘆、楽しみ、喜びといった感情を感じられなくなり、生きている感覚がなくなったように感じます。強い罪悪感や自己否定の考えに襲われ、物事に集中できなくなります。
睡眠の質が低下し、寝つきが悪くなったり寝すぎたりします。
身の回りの衛生状態を維持するのが難しくなります。

重度の症状

絶望感、孤独感、無価値感が強くなり、死や自殺について考えることもあります。
女性の場合、稀ではありますが月経周期が乱れたり月経が停止したりすることもあります。
身の回りのことが手につかなくなり、家事や仕事だけでなく、大切な人やペットの世話ができなくなるケースも少なくありません。
また、重度の場合には「微小妄想」と呼ばれる妄想が現れることもあります。たとえば、「自分は取り返しのつかない罪を犯した」と感じる罪業妄想、「財産が一切なくなる」と思い込む貧困妄想、「重大な病気にかかっている」と確信する心気妄想などが挙げられます。このような妄想が現れる場合は、特に注意が必要です。

うつ病の原因

はっきりとした原因は不明ですが、家系(遺伝)、辛い出来事、女性、特定の身体疾患、特定の薬の副作用などが危険因子とされています。特に、ご家族にうつ病の方がいる場合、発症しやすい傾向があります。

うつ病は男性と女性とどちらに多い?

男性より女性の方が発症率が高いとされる理由は、ホルモン変動や社会的要因など複合的と考えられていますが、完全には解明されていません。ホルモン量の変化のほか、甲状腺機能の異常などの身体的な要因が、うつ症状に影響することもあります。また、ベータ遮断薬など一部の薬剤がうつ病を引き起こす可能性があることも知られています。
また、身体的な病気や障害が、うつ病の直接または間接的な原因になることもあり、不安症、統合失調症、アルコールや薬物の依存症など、他の精神疾患と合併するケースも少なくありません。
晩秋から冬にかけて日照時間が短くなることで気分が沈むことがあり、季節性感情障害と呼ばれるうつ病の一種とみなされるほど重くなる場合もあります。
うつ病は社会的階層、人種、文化に関係なく発症する可能性があり、適切な治療とサポートが重要です。

うつ病の診断基準

うつ病の診断には、国際的な基準が用いられています。代表的なものがDSM-5とICD-10です。いずれの基準でも共通しているのは、「抑うつ気分」「興味・喜びの減退」「疲れやすさ」などが2週間以上継続していることが診断のポイントになります。ご自身に当てはまる症状があるかどうか、確認しながらご覧ください。

DSM-Ⅴ

DSMとは、アメリカの診断基準であり、全員が同様に診断できるように考案された厳格な基準です。2013年に発表されたDSM-Ⅴでは、双極性障害が他の疾患とはっきり区別され、死別によるストレスからくるうつ状態もうつ病に分類される点が異なります。

①または②に該当し、さらに症状が5つで2週間以上続く場合、うつ病と診断されることとなります。

  1. ほとんど毎日続く抑うつ感情(自己の言葉や、周りからの観察からそうだと分かる状態)
  2. 毎日の喜びが著しく低下している
  3. 著しい体重の増減、ほぼ毎日食欲に激しい変化がある
  4. 不眠または過眠がほぼ毎日続く
  5. 精神運動性の焦燥や制止がほぼ毎日続く(周りからの観察からそうだと分かる状態)
  6. ほぼ毎日、易疲労性や気力の低下が見られる
  7. 無価値感、過剰な罪悪感がほぼ毎日起こる
  8. 思考力や集中力の低下、決断困難な状態がほぼ毎日続いている
  9. 死について反復的に考えたり、自殺念慮や企図が繰り返し起こったりしている

ICD-10

WHOによって作られたもので、典型的な症状のケースを意識して、症状が記載されています。抑うつ気分、興味と喜びの喪失、易疲労感の増大のうち2つ以上の症状があり、そして以下のうち2つ以上が2週間以上継続する場合、うつ病として診断されます。

  1. 集中力と注意力の低下
  2. 自己評価と自信の減少
  3. 罪悪感と自己否定感
  4. 将来に対する希望の欠如と悲観的な考え方
  5. 自傷行為や自殺観念、自殺行動
  6. 睡眠障害
  7. 食欲不振

うつ病の治療について

うつ病の治療では、休養・薬物療法・精神療法(カウンセリング)を行います。この治療法は、身体疾患の治療と基本的に同じです。
まずは休養を取り、必要に応じて薬物療法で症状を軽減し、最終的に精神療法・カウンセリングで再発予防を行います。

休養

うつ病は、脳内のはたらきのバランスが崩れたり、遺伝的要因など複数の要因が関与して起こると考えられています。過度なストレスや疲労は脳機能に影響を与えてしまうため、まずはしっかりと休養をとることが、うつ病の治療にとって大切な第一歩となります。
うつ病の治療における休息では、仕事を軽減し、残業をしないという程度から、仕事を休んでリラックスするまで、色々あります。自宅で療養していても、家族に申し訳ない気持ちでいっぱいだと、不安定になる場合もあります。そのような場合には、軽度であっても、一時的に入院することが適しているかもしれません。

薬物療法

苦痛な症状により、休養がきちんと取れないことがあります。また、うつ病になると、脳内の神経細胞の情報伝達に異常が生じるため、脳の機能的不調を改善する必要があります。そのため薬物療法が行われます。薬を使用することに抵抗感をお持ちの方もいらっしゃるかもしれません。しかし、体の病気と同じように、うつ病は脳という臓器がエネルギー不足の状態に陥っています。それを治すために薬が活用されるのです。

抗うつ病の働きと種類

うつ病には、抗うつ剤と呼ばれる薬が有効です。抗うつ剤は、自身が持っているセロトニンやノルアドレナリンなどの神経伝達物質が、神経細胞同士の間で増加するよう働きかける効果を持っています。
抗うつ剤はすぐに効果を実感できるわけではなく、効果が現れ始めるまで通常2〜4週間程度、あるいはそれ以上かかることがあります。そのため、「すぐに効かない」と感じても、自己判断で服薬を中止せず、医師の指示に従って根気よく続けることが大切です。

副作用とその対処法

近年の抗うつ剤は比較的副作用が少ない種類が開発されていますが、眠気や胃腸の不快感などを感じることがあります。副作用は服用を始めてから約1週間で現れやすく、徐々に軽減される傾向があります。最初の1週間は効果が明確に現れず、主に副作用が感じられる時期です。副作用が苦しい場合には、専門医にご相談ください。
さらに、多くの患者様は睡眠障害に悩まされています。また、不安や恐怖を感じる方も少なくありません。これらの症状がある場合は、睡眠薬や抗不安薬(トランキライザー)なども併用します。これらの薬物は抗うつ剤よりも効果が早く現れ、服用後から効果が実感できる点が特徴です。

精神療法

うつ病の原因は単一ではないため、休息や薬物療法のみでは十分ではありません。抗うつ剤といった手段だけでは環境要因は解決できず、ストレスを溜めやすい性格や考え方も変化しません。精神療法やカウンセリングは主に再発防止を目指しており、自身の思考や行動パターンを見直すために行われます。
精神療法やカウンセリングには、認知行動療法、森田療法、内観療法などがありますが、共通するのは患者様が持つ「生きる力」を引き出す点です。これらは専門家が一方的に行うものではなく、患者様ご自身が専門家と協力し、自主性を持つことが大切です。

治療抵抗性うつ病に対する当院の治療

治療抵抗性うつ病とは

治療抵抗性うつ病は、複数の抗うつ剤を十分な期間・十分な量で試みても症状が十分に改善しない場合を指します。
うつ病の治療中には、薬物療法や心理療法だけでは限界があることがあります。そのような場合には、診断を見直す必要があるかもしれません。また、抗うつ剤との相性が悪い可能性もあります。伝統的な治療法を試みることで、うつ病の大部分が改善されると言われていますが、一部の方は本来の状態に戻るまで時間がかかることがあります。
定義には諸説ありますが、一般的には2種類以上の抗うつ剤で十分な治療を行っても改善が乏しい場合を指すことが多いです。

  • 仕事はうまくいっていても、休日には寝たきりになる
  • 頭が思うように機能せず、以前よりも集中力が低下している

このような状態では、本来の調子になっているとは言えません。当てはまる場合は、TMS治療を検討することもあります。

当院では、rTMS療法やECT療法を採用しています

当院では、うつ病に対して、最先端の治療法であるrTMS療法とECT療法を保険診療で大学や大病院などの連携施設にご案内する形で提供しています。これらの治療は、従来の薬物療法では効果が見られなかった方や、薬物療法を希望しない方に対して有効な選択肢となります。

rTMS療法とは

rTMS療法(反復経頭蓋磁気刺激療法)は、脳の働きが低下したことによって引き起こされるうつ病や抑うつ状態に対して行う治療です。この治療は、脳に磁気を使って刺激を与え、脳の機能を回復させる方法で、薬物療法が効果を発揮しにくい場合や、薬の副作用が気になる方にも適しています。双極性障害の患者様にも、適切な状況下で実施することが可能です。

副作用として、けいれん発作が起こる可能性もありますが、その頻度は極めて低い(一般に0.1%以下)と報告されており、過度に心配する必要はありません。また、刺激された部位が一時的に痛むことがありますが、その他の副作用はほとんど見られません。治療は短時間で行われ、初回治療は約1時間、2回目以降は約6分の時間で終了します。急性期の治療では、週に3回以上の治療を行うことが望ましいとされています。
rTMS療法は、日本国内ではまだ新しい治療法であり、保険適用施設は限られています。院長が大病院でrTMSの実施を担当していた経験を持つため、連携施設へのスムーズな案内が可能です。当院ではその導入も含めてうつ病の寛解に力を入れており、患者様の回復をサポートします。

rTMS療法の効果

rTMS療法は、世界中で注目されている精神疾患の治療法で、薬物療法や心理療法とは異なり、脳の特定の領域に非侵襲的に刺激を与え、その活動を正常化させる治療法です。これにより、うつ病に関連する神経回路の異常な活動パターンを正常化することが期待されています。
この治療は、大脳皮質に強力な集束磁場パルスを使用し、TMSコイルを使って脳の特定領域を刺激します。繰り返しの刺激により、ニューロン間の接続が改善し、脳の健康的な働きを取り戻すことが可能です。長期的な効果が期待され、神経活動の持続的な変化をもたらします。

ECT療法とは

ECT(電気けいれん療法)は、1930年代に開発された治療法で、頭部に電気を流すことでけいれんを誘発し、脳の機能を改善するものです。全身麻酔と筋肉をリラックスさせる薬を使用し、安全に施術を行います。当院では、正型電気けいれん療法(MECT)を実施しており、患者様に適した治療を行います。
ECTは、薬物療法が効果を発揮しない場合や、重症の精神疾患に迅速な対応が求められる場合に適用されます。自殺リスクが高い方や、高齢者、妊婦の方など、薬物療法が難しい状況の方にも対応可能です。

ECT療法の効果

ECT療法によって、脳内で特定の化学物質が放出され、脳の成長が促進されると考えられています。治療を受けるたびに効果が高まり、特に感情を制御する脳の部位に影響を与える可能性があります。
現在も研究が進行中であり、ECT療法は、うつ病や躁うつ病、統合失調症や認知症に伴う妄想や興奮などの症状改善に効果的であることが確認されています。

まとめ

薬が効かない、何をしても良くならない…そんな治療抵抗性うつ病にも、有効な治療法は確実に存在します。うつ病は治らない病気ではありません。あなたに合った治療法を一緒に探しながら、回復への一歩を進めていきましょう。