「なぜこんなに朝がつらいの?」──考えられる原因とは
「ちゃんと寝ているはずなのに、朝がつらい」「目覚ましを止めた記憶もない」——そんなことはありませんか?実は“起きられない”のには、ちゃんとした理由があります。
睡眠不足ややる気の問題だけではなく、生活リズムの乱れや体の不調、こころの状態などが関係していることも。朝がつらくなる代表的な原因を、いくつかの視点からご紹介します。
朝がつらいのは、体のリズムがズレているからかもしれません
人の体には、毎日同じような時間に眠くなり、朝には自然と目覚めるリズムが備わっています。
でも、そのリズムが乱れると、朝になっても体は「まだ眠いまま」。無理に起きようとしても、つらく感じてしまうのです。
この章では、体内時計と呼ばれる“体の時計”がどんな働きをしているのか、またそれが乱れる原因について見ていきます。
体内時計の乱れによる問題
たとえば夜更かしが続いたり、昼夜逆転の生活になったりすると、体内時計がずれて朝の目覚めがどんどんつらくなってしまいます。また、過眠症や発達障害、起立性調節障害などの病気が関係している場合もあり、「なぜか朝だけ極端につらい」と感じる人も少なくありません。
ロングスリーパーと呼ばれる体質の方や、光・音の刺激に敏感な方も、体内時計のリセットがうまくいかず、朝が苦手になりやすい傾向があります。
日中にしっかり光を浴びる、毎日同じ時間に起きる、などの習慣が、リズムを取り戻すヒントになることもあります。
体内時計とメラトニンの関係
体内時計は、メラトニンというホルモンの働きによって、覚醒と睡眠のリズムを整えています。メラトニンは、日中はほとんど分泌されず、夜になると自然と分泌量が増える仕組みです。
日中に太陽の光を浴びたり、窓際で過ごしたりすると、体内時計がリセットされやすくなり、夜のメラトニン分泌が整いやすくなります。
逆に、夜遅くまでスマートフォンやパソコンを見ていると、画面から出るブルーライトが脳を刺激して、メラトニンの分泌が抑えられてしまうこともあります。
眠る前には照明を少し落とし、画面の使用を控えることで、自然な眠気が訪れやすくなります。
朝がつらい人に見られる、いくつかの共通点
「どうして自分だけ朝に弱いんだろう…」と感じたことはありませんか?
実は、朝のつらさを感じる人には、いくつかの共通した傾向があります。
ここでは、睡眠や体調、生活のリズムに関する“気づきにくい習慣”や特徴を取り上げてみます。あなたにも当てはまることがあるかもしれません。
夜型の生活リズム
夜型生活が増える中で、体内時計が遅れ、朝の目覚めが遅くなることがあります。特に、強い光や夜更かしが原因となります。
睡眠の質が低い
睡眠の質が悪いと、どれだけ寝ても疲れが取れず、朝起きるのが難しくなります。寝つきが悪かったり、途中で目が覚めたりする場合、体調に問題があるかもしれません。
ストレスが多い
過度なストレスは、メンタルの不調を引き起こし、睡眠の質を低下させます。ストレスは自律神経のバランスを崩し、心身に影響を与えることがあります。
夕食が遅い
遅い夕食は消化を妨げ、睡眠に悪影響を与えます。夜遅くに食事をとることで、睡眠の質が低下する可能性があります。
低血圧の影響
低血圧(最高血圧100mmHg未満)が原因で、朝の目覚めが辛くなることがあります。低血圧に伴う倦怠感や疲れやすさが影響することもあります。
「ただの怠け」じゃないかも?朝のつらさに隠れている病気とは
朝起きられないことに、なんとなく罪悪感を感じていませんか?
けれど、実際には身体や心の不調が関係しているケースも多く、「病気のサイン」としてあらわれていることもあります。
ここでは、朝の不調に関係しやすい代表的な疾患をご紹介します。「もしかして…」と感じた方は、早めの受診が安心につながるかもしれません。
睡眠相後退症候群
睡眠相後退症候群は、体内時計が遅れることで、寝る時間や起きる時間が遅くなる状態です。特に、夜遅くまで活動していると、朝の目覚めが遅くなり、起きるのが困難になることがあります。
閉塞型睡眠時無呼吸症候群
この病気では、眠っている間に一時的に呼吸が止まることがあります。呼吸が止まるたびに深い眠りから浅い眠りに移行し、睡眠の質が低下します。これにより、朝起きるのが辛くなり、日中の眠気も強くなります。
抑うつ症状
うつ病や抑うつ症状があると、朝起きることが極端に辛く感じることがあります。抑うつ症状は、体が重く感じられ、エネルギーが出ないため、朝起きるのが非常に難しくなることがあります。
慢性疲労症候群
慢性疲労症候群は、原因不明の強い疲労感が続く病気です。これにより、朝の目覚めがつらく感じ、起きても疲れが取れないと感じることが多いです。
高血圧や低血圧
血圧が高すぎたり低すぎたりする場合、朝起きた時に立ちくらみやめまいが生じ、起き上がるのがつらくなることがあります。特に、朝起きた時の血圧の急激な変動が原因となることがあります。
甲状腺疾患
甲状腺機能低下症(橋本病など)は、ホルモンの分泌不足により、倦怠感や眠気を感じやすくなります。これにより、朝の目覚めが非常に難しく、日中の眠気も強くなることがあります。
その他の睡眠障害
周期性四肢運動障害やレム睡眠行動障害などの睡眠障害があると、眠りの質が低下し、朝起きれない原因になります。女性の更年期や高齢者の認知症による睡眠障害も要因となります。
また、ロングスリーパーですと、前日の夜に早めに寝ないと翌朝起きるのが難しくなります。
眠りを浅くしてしまう、ついやってしまいがちな生活習慣とは?
「ちゃんと寝たはずなのに疲れが取れない」——そんなときは、眠る前の過ごし方に原因があるかもしれません。
実は、ちょっとした習慣が睡眠の質を下げてしまっていることも。
ここでは、よくある“眠りを妨げるNG習慣”をご紹介します。心当たりがあれば、少しずつでも見直してみましょう。
寝る前のカフェインの摂取
「夜のコーヒーが楽しみ」という方も多いですが、カフェインには脳を覚醒させる作用があります。
就寝前にコーヒーやエナジードリンク、チョコレートを摂ると、眠気が遠のいてしまうことも。
できれば夕方以降は控えめにし、眠るためのスイッチを邪魔しないよう意識してみましょう。アルコールやタバコも同様に、寝つきを悪くする原因になります。
就寝直前の入浴
熱いお風呂に入るとリラックスできる半面、体温が上がりすぎることで眠気を妨げることもあります。
ポイントは「体が少し冷めはじめたタイミング」で眠りにつくこと。就寝の1〜2時間前に入浴を済ませるのが理想です。
お湯の温度はぬるめに、照明も少し落とすとより効果的です。
就寝直前の食事
夜遅くにしっかり食べてしまうと、胃腸が働き続けてしまい、体が“眠るモード”に切り替わりません。
脂っこいものや高カロリーなものは特に注意が必要です。寝る2〜3時間前には食事を終えるようにし、どうしても空腹がつらい時は、温かいスープや消化のよい軽食を選んでみてください。
スマートフォンの使用
ついベッドの中でスマホを見てしまう——という方も多いはず。でも、スマートフォンの光(特にブルーライト)は脳を刺激し、眠気を遠ざけてしまいます。
また、SNSやニュースなどで気持ちが高ぶってしまうことも、眠りに影響を与える要因に。
就寝の1時間前は“スマホ断ち”の時間にし、本を読んだり、照明を落として静かに過ごす時間に変えてみると、ぐっすり眠れるようになるかもしれません。
「朝がラクになる」ために、今日からできる生活の工夫
「明日こそ早起きしよう」と思っていても、気づけば夜ふかししてしまう。
そんな自分にモヤモヤしてしまう日、ありますよね。
睡眠の質を上げることは、朝のつらさをやわらげる一歩になります。
ここでは、生活の中で無理なく取り入れられる“ぐっすり眠るための工夫”をご紹介します。
リラックスして、副交感神経を優位に
夜は体と心を“休むモード”に切り替える時間。
自律神経のバランスを整えるためには、スマートフォンの使用を控えたり、深呼吸やストレッチなどの穏やかな動作を取り入れるのがおすすめです。
「無理に頑張らない」ことも、立派な睡眠準備。自分なりのリラックス方法を見つけてみましょう。
深部体温をうまく下げる
眠気は「体の中の温度」が少し下がることで自然と訪れます。
そのためには、就寝1〜2時間前に入浴して、体温を一度上げてからゆるやかに冷ますのが理想的。
お気に入りの入浴剤や、心が落ち着く香りを使って、眠りに向かう“儀式”を楽しむのもいいですね。
睡眠ホルモンの材料をしっかりと
メラトニンというホルモンは、眠りを導いてくれる大切な存在。
その材料となるのが「トリプトファン」というアミノ酸で、魚や大豆製品、肉類に多く含まれています。
朝ごはんに和食を取り入れると、日中にメラトニンの前段階となる物質が作られやすくなります。
さらに、夜は光を控えることで分泌が促され、眠りにつきやすくなります。
考えごとを「紙に出して」手放す
頭の中にいろいろなことが浮かんで眠れない——そんな日は、紙に書き出してみてください。
やることリストや今日の出来事、モヤモヤした感情でもOKです。
頭の中を整理すると、不思議と気持ちが軽くなり、自然と眠気が訪れることもあります。
「どうしても朝がつらい」と感じたら、一度相談してみませんか
生活習慣を見直しても、それでも朝がつらい。
そんなときは、自分だけで抱え込まず、専門家の力を借りてみるのもひとつの選択です。
当院では、お話を丁寧にうかがいながら、必要に応じて診断や治療を一緒に考えていきます。
診断がついたときの「休む」という選択肢
もしも精神疾患が見つかった場合、「休むこと」も立派な回復の一歩です。
心の調子を整えるには、無理をせずゆっくり過ごす時間が必要なこともあります。
カウンセリングや治療を受けながら、ご自身のペースで少しずつ元気を取り戻していけるよう、私たちがサポートします。